一つの面白さの為に

　幸せという感覚も、生き方における一つの基準でしかないのであろう。
　何かの状態になろうとすることは、素晴らしいことだとは思う。ただ、その形であり、そのもの自体への欲求は、本当に、自身の欲求から来ているのであろうか。それが、正解だと世間が言っているから、それを追い求めているという可能性への認識を持っているのであろうか。
　自身における普通という枠は、個々人であり、世間における普通の枠とは、差異があり、時に、無意識の中で、それらの普通を、自身の普通と思い込むことができる。そういった枠の調節機能によって、人は、生きていけているとも言えるが、それは、時に、従順に従っているだけになっているのではなかろうか。
　ただ、自身の枠への認識を持ち、世間の枠と相対さなければならないと言いたいわけでもない。それは、大変な作業ではあるが、常に素晴らしいとも思わない。
　熱血漢の役に向いている俳優が、インテリの役をやって、賛否両論を言われることがある。確かに、彼は、俳優としての技量は、高くないのかもしれない。ただ、それでも、俳優として一流であるということに、異論はない。俳優に限らず、技量が無ければ、その職業として成り立たないというわけでもない。
　ただ、技量があるからこそ出会える面白さは、あるのであろう。当人であり、観戦者であり。