週刊Coelacanth

小川作文講座 http://ogawasakubun.blog.jp/

                        <お知らせ>
                        現在月一回の更新になっております。
                        毎月、中旬頃を予定しています。
                        過去の記事も見ていただければ幸いです。

サイレン

 救急車、パトカー、消防車などの緊急車両は、サイレンを鳴らしながら走行する時がある。その音に対しては、法的にのみならず、社会の中でも、優先させるべきという共通認識を持っているであろうか。
 社会がその状況の緊急性を認め、順番を待たなくても良いと判断し、その権限を与えられた人々。一時的に、ある種の特権を授与されたとも言えるであろうか。また、その権限を与えられる背景には、社会からの補助を受けられる人々とも共通している側面があるであろうか。
 他者からの認識において、広義な意味合いでの弱者という領域に入るというのも、自己防衛の一つの手段でもある。そして、それは肩書きによるものばかりではない。謙遜という意識の背景の一つであり、ちょっとした、その様な側面を含んだ行動は、日々の中で、我々は、日常的に行っているのではなかろうか。
 そして、同じくらいの緊急性を当人が感じていたとしても、その権利を与えられない状況は、あるのであろう。普遍的に普通という認識であったとしても、その内実も、同様に普遍的に普通とは限らず、また、その側面への自覚の有無は、関係ないのであろう。
 彼らが存在しているお陰で、一時的に権限を授与される人々が、存在できるとも言える。それは、時に、犠牲とも言えるが、時に努力であり、役割とも言えるのであろう。枠の外と中の話であり、悪という存在のお蔭で、善が存在し、善という存在のお蔭で、悪が存在できる様に。

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